鉄筋コンクリート床版への衝撃破壊解析
概要
近年、災害等による飛来物から重要な構造物を保護する必要性が高まっています。
飛来物の衝突に対する構造物の安全性を検討する場合、衝撃破壊の機構は複雑であり理論的な予測は難しく、また実験は大がかりでコストがかかるためシミュレーションが用いられます。
- 固定された鉄筋コンクリートスラブに鉄球をぶつけて衝撃を与える
- 発生する亀裂と破壊の様子を破壊解析とクラック解析により再現
技術情報
使用ツール
LS-DYNA R10.1.0
LS-PrePost 4.6
解析手法
- 破壊解析(要素削除)
- 破壊解析(SPH法)
- クラック解析
キーワード
鉄筋コンクリート、陽解法動解析、衝撃解析、破壊解析、粒子法、SPH法、クラック
詳細
解析モデル
- 左右端部固定されたコンクリートスラブに鉄球が衝突
- 鉄筋:弾塑性体
- 鉄球:剛体
解析の種類 | 主な内容 | 詳細 | 材料名 |
---|---|---|---|
破壊解析 | コンクリートの破壊箇所の欠落 | ・密度(RO)、圧縮強度(FPC)、骨材サイズ(DAGG)の入力のみでコンクリートを模擬できる ・圧縮強度の破壊基準(*)を指定し、基準値を超えた要素を削除する | MAT159 CSCM CONCRETE |
コンクリートの破片が飛散する様子 | ・DEFINE_ADAPTIVE_SOLID_TO_SPHキーワードを設定し、コンクリートのソリッド要素にSPH要素を埋め込み | ||
クラック解析 | コンクリートのひび割れ | ・鉄筋コンクリートのひび割れ(smeared crack)を解析するためのモデル ・圧縮強さ、引張強さ、ポアソン比、接線係数を入力しコンクリートを模擬する | MAT084 WINFRITHモデル |
解析結果
破壊解析1(要素削除)
- 衝突面の裏側が大きく損傷する裏面剥離が発生
- 衝突部は損傷、破壊により応力は低くなり、両端部の応力が高くなる
破壊解析2(SPH法)
- 破壊解析1と同様に裏面剥離が発生
- SPH要素によりコンクリートの破片が飛散する様子が分かる
クラック解析
- 衝突部が破損しないため、中央部の応力が高くなる
- ひび割れの状態を可視化
事例は以上です
技術コラム
鉄筋コンクリート
構造物が破壊する際には、材料や荷重条件などによっていくつかの破壊形態があります。
鉄筋コンクリートは鉄筋とコンクリートを組み合わせた構造で、それぞれの特徴を生かした構造部材として一般的に使われます。
コンクリートは大きな圧縮荷重を負担することができますが、塑性変形をほとんど伴わない脆性破壊をする材料の代表例です。一方、鉄筋は引張や曲げ荷重に強く、破断する時は金属の代表的な破壊形態である延性破壊となります。
LS-DYNAでは、破壊基準を満たした要素を削除することで破壊を表現できます。ひずみや応力等の複数の破壊基準の中からどの基準を使うかは、ユーザーがモデルの破壊形態を理解して選択する必要があります。
粒子法(SPH法)
Smoothed Particle Hydrodynamics 法 (SPH法)は流体力学や材料力学にて用いられる微分方程式の数値解析手法の一つで、粒子法の一種です。粒子法は対象となる連続体を有限個の粒子の集団に置き換え、ナビエ・ストークス方程式などの連続体の支配方程式を元に導かれる粒子間相互作用に従って粒子を移動させる手法です。
SPH法は物体が破断したり小さな破片や飛沫が飛び散ったりするような現象も自然に計算可能であるため、流体の飛散や航空機エンジンのバードストライクなどの解析に使用されています。