流体励起振動を利用した水流発電タービンブレード
概要
流体の流れによって物体が振動する「流体励起振動」という現象があり、以下のような例があります。
- 電線のギャロッピング
- カルマン渦による不安定現象
- タコマナローズ橋の崩落
この現象を利用して、従来のプロペラ翼とは異なる原理で駆動する水流発電方式が提案されています。
岡山大学では、この振動現象を積極的に利用してエネルギーを取り出す研究が行われ、Hydro-VENUS(Hydrokinetic Vortex Energy Utilization System)の開発が続けられています。
公表されている研究論文では、あまりCFDが用いられていません。
本事例では、今回は過去に発表された論文の中から、発電能力に関する実験値とCFDの結果を比較して、CFDの適用性を確認することができました。
製造性・コスト | 強度・耐久性 | 正逆両方向に回転 | |
---|---|---|---|
流体励起振動を利用した翼 | ○形状がシンプル、製造しやすく低コスト | ○翼内部に補強構造を組み込みやすい | ○可 |
従来のプロペラ翼 | △形状が複雑 | △補強しにくい | ×不可 |
使用した論文
「流体励起振動の励振機構を利用した革新的な水流発電用タービンブレード」比江島慎二他;土木学会論文集B3(海洋開発),74(1), 1-12, 2018
Hydro-VENUS of Hiejima Laboratory (okayama-u.ac.jp)
技術情報
使用ツール
ANSYS Fluent 2021R1
キーワード
流体解析、CFD、 渦可視化、MRF
詳細
解析モデル
- 寸法:図参照
- 入口流速 :0.96[m/s]
- ブレード回転数 :18[rad/s]
- 流体: 水
- 乱流モデル: k-ω SST
- メッシュ
解析結果
- ブレード先端とブレード根本付近から渦が放出される様子
- ブレード先端(280mm)と真ん中(200mm)では、渦放出の様子に非定常性は見られず、根本側では不安定な渦放出がみられる。
- これは、ブレード先端では回転による周速度が水流に対して高いため流れに対して迎角が小さいが、根本は迎角が大きくなるためだと考えられる。
- 実験結果と比較すると、CFD結果の方がトルク・出力共に実験値に対して約45%大きい。
- これは、実験装置のセンサーまでの損失に起因していると考えられる。実験装置の全体図をみると、水中のブレード軸から、水上のトルクセンサーまで歯車・チェーンを介して伝達している。
- さらにピーク回転数(18[rad/s])の前後の回転数で同じ解析を行ったところ、得られるトルクが減った。このことからピーク回転数の傾向は得られると思われる。
事例は以上です。